魅了のある男になるために

これは5年近く彼女がいない男の戦いの記録である

秘密 THE TOP SECRET

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■スタッフ

監督            大友啓史
原作            清水玲子
脚本             高橋泉
                     大友啓史
製作総指揮 大角正

■キャスト

生田斗真 薪剛
岡田将生 青木一行
吉川晃司 貝沼清孝
松坂桃李 鈴木克洋
栗山千明 三好雪子

■あらすじ

死者の記憶を映像化する技術、MRI技術を使い、難事件の操作を行う科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」

新人捜査官である青木は室長の薪のもと、ある死刑囚の脳の映像を見ることになるが、その映像には驚愕の事実が写っていた。

 

!!!この記事では映画と原作漫画の核心に触れる、ネタバレがあります。!!!

 

原作を見ずに映画を見るべきだったかもしれない。

 

予告編を見た時、期待させられのは非常に映像の作りこまれていたからだ

原作漫画には一切登場しない、MRI体験を行うものが取り付ける器具の仰々しさや原作のイメージを踏襲した役者たち、どこか殺伐とした雰囲気など予告編で魅力に感じた要素は本編でも十分魅力的だ。

 

特に世界観は原作漫画ではそこまで押されていなかった要素であるが、映像化する上でそこを補強してくのは非常に正しいと思う。

 

だがしかしビジュアル面は非常に力が入っている本作だが、ストーリー、お話の部分には難があるのは誰の目にも明らかだろう。

 

筆者も含めた原作漫画の読者はところどころの改変に違和感というか失望を感じずにはいられない。

また映画から見た人は登場人物たちの行動原理がいまいち理解できておらず、困惑してしまうだろう。

筆者が思うにこの映画では3つの改変がストーリーに大きな影響を与えている。(他にもいろいろ変えているが大きな問題は3つだ)

 

1. 2つの事件の組み合わせになっている

これは誰の目にも明らかな部分だろう。

原作では別々の事件であった貝沼事件と露口絹子の事件が同時並行に起こり、2つの事件に繋がりができている。

この2つの事件は原作だと1,2巻とかなり序盤の話だが、その後の話にも影響を与える非常に重要なエピソードだ。

ちょうど映画の公開にあわせてkindleでは期間限定で無料配信されているので、ぜひ読んでみてほしい。

 

 

貝沼事件は薪の抱えている秘密に関わる重要な事件なので映像化する上で外せないだろう。

そして絹子の事件は死者の記憶を見ることの是非、人の秘密に赤の他人が触れることの 是非を描いており、本作のテーマに関わってくる内容なので選ばれた理由はわかる。

しかしこの2つを長編映画にする上で繋げ方については非常に疑問が残る。

 

2. 絹子の動機が変更されている

単刀直入に言おう。原作における絹子の根本的な動機は父にレイプされ、男性へ嫌悪感を感じていることだ。

しかしこの映画ではサイコパスとして説明される。

父親を思っていたみたいな描写が微妙にあるので、単なるサイコパスじゃないという含みもあるけど、それだと動機が分からなくなるので、サイコパスであることに変わりはないだろう。

 

これは原作ファンには非常に失望する点であるし、絹子の言動の説得力も失われる。

 絹子は原作で自分の父親の記憶を見ようとする青木を攻める。それは殺人の露呈だけでなく、自身と父だけの秘密に土足で侵入しようとする行為だからだ。

 

おそらくこの改変は貝沼と絹子が出会っていたという終盤の展開のためにも修正されているのだが、この展開自体が1であげた繋がりを持たせるための強引なものにしかなっていない。

なぜなら絹子と貝沼が会っていてもいなくても話には何も影響しない。絹子が貝沼の意志を継いで殺人を行っているわけでもない。(貝沼の意志は継ぎようがないが)

そもそも貝沼が絹子と何をしたのかはサッパリわからない。

 

3. 薪と青木の関係性が変更されている

 

1,2で怒っている人も多いが最も深刻な問題はこの3ではないかと思う。

原作の薪と青木はいわゆるBL的な空気を匂わせてる。

青木は薪の犬であるかのように盲信し(実際にそんなセリフがある)

また薪は青木に自分の親友であった鈴木を重ね、気にしている。これは原作が少女漫画であったから、入れられた要素であることは間違いない。

しかし原作ではこの部分に明確に理由付けがなされていたし、この二人の男のお互いへの想いが作品を動かしていた。

 

しかしこの映画版では二人の関係性は薄くなっている。 

どころかほとんどなくなっている。

具体的には鈴木の記憶を見る人物が青木から薪に変更になっている。もちろんドラマ的には薪が鈴木のトラウマ、そして貝沼を乗り越えるという話につなげていきたいのだろう。

しかしここで青木が鈴木の記憶を見ないと、薪への青木の思い入れがなくなり、二人にあったホモソーシャル的な絆は発生しなくなってしまう。

これが生まれないと何故鈴木が死んだのかという感情的な部分の根拠は弱くなってしまう。 

 

それもこのシーンはただ鈴木の記憶が見なくなったどころか、青木はその場に立会もせずに絹子に会いに行ってしまっている。

本作の脚本で一番ひどいのがここで、この二人の主人公の別行動が話的に全くつながっていかないのだ。

薪が鈴木の記憶もとい貝沼の記憶を見たところで絹子を追い詰めるという目的から完全に逸脱していている。ただもやもやしていたから、職権乱用しただけだ。

青木は青木で、悪夢を見たり、絹子の父親との同化に悩んだりするのも薪とはいっさい関係ないところで始まって終わる。

 

ということで雑感的に書いてしまったが、秘密のお話で良かった部分がだいぶ損なわれた映画化で、ちょっと見ていられなかった。

正直言うと大友監督は映像の出来は良いけど、話は微妙ということも多い人なので、この辺りは今後良くなっていくことを願っている。